ヨブ記30-31、使徒13:26-52

ヨブ記

第30章

30:1しかし今はわたしよりも年若い者が、
かえってわたしをあざ笑う。
彼らの父はわたしが卑しめて、
群れの犬と一緒にさえしなかった者だ。
30:2彼らの手の力からわたしは何を得るであろうか、
彼らはその気力がすでに衰えた人々だ。
30:3彼らは乏しさと激しい飢えとによって、
かわいた荒れ地をかむ。
30:4彼らは、ぜにあおいおよび灌木の葉を摘み、
れだまの根をもって身を暖める。
30:5彼らは人々の中から追いだされ、
盗びとを追うように、人々は彼らを追い呼ばわる。
30:6彼らは急流の谷間に住み、
土の穴または岩の穴におり、
30:7灌木の中にいななき、いらくさの下に押し合う。
30:8彼らは愚かな者の子、また卑しい者の子であって、
国から追いだされた者だ。
30:9それなのに、わたしは今彼らの歌となり、
彼らの笑い草となった。
30:10彼らはわたしをいとい、遠くわたしをはなれ、
わたしの顔につばきすることも、ためらわない。
30:11神がわたしの綱を解いて、
わたしを卑しめられたので、
彼らもわたしの前に慎みを捨てた。
30:12このともがらはわたしの右に立ち上がり、
わたしを追いのけ、
わたしにむかって滅びの道を築く。
30:13彼らはわたしの道をこわし、わたしの災を促す。
これをさし止める者はない。
30:14彼らは広い破れ口からはいるように進みきたり、
破壊の中をおし寄せる。
30:15恐ろしい事はわたしに臨み、
わたしの誉は風のように吹き払われ、
わたしの繁栄は雲のように消えうせた。
30:16今は、わたしの魂はわたしの内にとけて流れ、
悩みの日はわたしを捕えた。
30:17夜はわたしの骨を激しく悩まし、
わたしをかむ苦しみは、やむことがない。
30:18それは暴力をもって、わたしの着物を捕え、
はだ着のえりのように、わたしをしめつける。
30:19神がわたしを泥の中に投げ入れられたので、
わたしはちり灰のようになった。
30:20わたしがあなたにむかって呼ばわっても、
あなたは答えられない。
わたしが立っていても、あなたは顧みられない。
30:21あなたは変って、わたしに無情な者となり、
み手の力をもってわたしを攻め悩まされる。
30:22あなたはわたしを揚げて風の上に乗せ、
大風のうなり声の中に、もませられる。
30:23わたしは知っている、あなたはわたしを死に帰らせ、
すべての生き物の集まる家に帰らせられることを。
30:24さりながら荒塚の中にある者は、
手を伸べないであろうか、
災の中にある者は助けを呼び求めないであろうか。
30:25わたしは苦しい日を送る者のために
泣かなかったか。
わたしの魂は貧しい人のために
悲しまなかったか。
30:26しかしわたしが幸を望んだのに災が来た。
光を待ち望んだのにやみが来た。
30:27わたしのはらわたは沸きかえって、静まらない。
悩みの日がわたしに近づいた。
30:28わたしは日の光によらずに黒くなって歩き、
公会の中に立って助けを呼び求める。
30:29わたしは山犬の兄弟となり、
だちょうの友となった。
30:30わたしの皮膚は黒くなって、はげ落ち、
わたしの骨は熱さによって燃え、
30:31わたしの琴は悲しみの音となり、
わたしの笛は泣く者の声となった。

第31章

31:1わたしは、わたしの目と
契約を結んだ、
どうして、おとめを慕うことができようか。
31:2もしそうすれば上から神の下される分は
どんなであろうか。
高き所から全能者の与えられる嗣業は
どんなであろうか。
31:3不義なる者には災が下らないであろうか。
悪をなす者には災難が臨まないであろうか。
31:4彼はわたしの道をみそなわし、
わたしの歩みをことごとく数えられぬであろうか。
31:5もし、わたしがうそと共に歩み、
わたしの足が偽りにむかって
急いだことがあるなら、
31:6(正しいはかりをもってわたしを量れ、
そうすれば神はわたしの潔白を知られるであろう。)
31:7もしわたしの歩みが、道をはなれ、
わたしの心がわたしの目にしたがって歩み、
わたしの手に汚れがついていたなら、
31:8わたしのまいたのを他の人が食べ、
わたしのために成長するものが、
抜き取られてもかまわない。
31:9もし、わたしの心が、女に迷ったことがあるか、
またわたしが隣り人の門で
待ち伏せしたことがあるなら、
31:10わたしの妻が他の人のためにうすをひき、
他の人が彼女の上に寝てもかまわない。
31:11これは重い罪であって、
さばきびとに罰せられるべき悪事だからである。
31:12これは滅びに至るまでも焼きつくす火であって、
わたしのすべての産業を根こそぎ焼くであろう。
31:13わたしのしもべ、また、はしためが
わたしと言い争ったときに、
わたしがもしその言い分を退けたことがあるなら、
31:14神が立ち上がられるとき、わたしはどうしようか、
神が尋ねられるとき、なんとお答えしようか。
31:15わたしを胎内に造られた者は、
彼をも造られたのではないか。
われわれを腹の内に形造られた者は、
ただひとりではないか。
31:16わたしがもし貧しい者の願いを退け、
やもめの目を衰えさせ、
31:17あるいはわたしひとりで食物を食べて、
みなしごに食べさせなかったことがあるなら、
31:18(わたしは彼の幼い時から父のように彼を育て、
またその母の胎を出たときから彼を導いた。)
31:19もし着物がないために死のうとする者や、
身をおおう物のない貧しい人をわたしが見た時に、
31:20その腰がわたしを祝福せず、
また彼がわたしの羊の毛で
暖まらなかったことがあるなら、
31:21もしわたしを助ける者が門におるのを見て、
みなしごにむかってわたしの手を
振り上げたことがあるなら、
31:22わたしの肩骨が、肩から落ち、
わたしの腕が、つけ根から折れてもかまわない。
31:23わたしは神から出る災を恐れる、
その威光の前には何事もなすことはできない。
31:24わたしがもし金をわが望みとし、
精金をわが頼みと言ったことがあるなら、
31:25わたしがもしわが富の大いなる事と、
わたしの手に多くの物を獲た事とを
喜んだことがあるなら、
31:26わたしがもし日の輝くのを見、
または月の照りわたって動くのを見た時、
31:27心ひそかに迷って、手に口づけしたことがあるなら、
31:28これもまたさばきびとに罰せらるべき悪事だ。
わたしは上なる神を欺いたからである。
31:29わたしがもしわたしを憎む者の滅びるのを喜び、
または災が彼に臨んだとき、
勝ち誇ったことがあるなら、
31:30(わたしはわが口に罪を犯させず、
のろいをもって彼の命を求めたことはなかった。)
31:31もし、わたしの天幕の人々で、
『だれか彼の肉に飽きなかった者があるか』と、
言わなかったことがあるなら、
31:32(他国人はちまたに宿らず、
わたしはわが門を旅びとに開いた。)
31:33わたしがもし人々の前にわたしのとがをおおい、
わたしの悪事を胸の中に隠したことがあるなら、
31:34わたしが大衆を恐れ、宗族の侮りにおぢて、
口を閉じ、門を出なかったことがあるなら、
31:35ああ、わたしに聞いてくれる者があればよいのだが、
(わたしのかきはんがここにある。
どうか、全能者がわたしに答えられるように。)
ああ、わたしの敵の書いた
告訴状があればよいのだが。
31:36わたしは必ずこれを肩に負い、
冠のようにこれをわが身に結び、
31:37わが歩みの数を彼に述べ、
君たる者のようにして、彼に近づくであろう。
31:38もしわが田畑がわたしに向かって呼ばわり、
そのうねみぞが共に泣き叫んだことがあるなら、
31:39もしわたしが金を払わないでその産物を食べ、
その持ち主を死なせたことがあるなら、
31:40小麦の代りに、いばらがはえ、
大麦の代りに雑草がはえてもかまわない」。ヨブの言葉は終った。


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