出エジプト記3-13章

出エジプト記

第3章

3:1モーセは妻の父、ミデヤンの祭司エテロの羊の群れを飼っていたが、その群れを荒野の奥に導いて、神の山ホレブにきた。3:2ときに主の使は、しばの中の炎のうちに彼に現れた。彼が見ると、しばは火に燃えているのに、そのしばはなくならなかった。3:3モーセは言った、「行ってこの大きな見ものを見、なぜしばが燃えてしまわないかを知ろう」。3:4主は彼がきて見定ようとするのを見、神はしばの中から彼を呼んで、「モーセよ、モーセよ」と言われた。彼は「ここにいます」と言った。3:5神は言われた、「ここに近づいてはいけない。足からくつを脱ぎなさい。あなたが立っているその場所は聖なる地だからである」。3:6また言われた、「わたしは、あなたの先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である」。モーセは神を見ることを恐れたので顔を隠した。
3:7主はまた言われた、「わたしは、エジプトにいるわたしの民の悩みを、つぶさに見、また追い使う者のゆえに彼らの叫ぶのを聞いた。わたしは彼らの苦しみを知っている。3:8わたしは下って、彼らをエジプトびとの手から救い出し、これをかの地から導き上って、良い広い地、乳と蜜の流れる地、すなわちカナンびと、ヘテびと、アモリびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとのおる所に至らせようとしている。3:9いまイスラエルの人々の叫びがわたしに届いた。わたしはまたエジプトびとが彼らをしえたげる、そのしえたげを見た。3:10さあ、わたしは、あなたをパロにつかわして、わたしの民、イスラエルの人々をエジプトから導き出させよう」。3:11モーセは神に言った、「わたしは、いったい何者でしょう。わたしがパロのところへ行って、イスラエルの人々をエジプトから導き出すのでしょうか」。3:12神は言われた、「わたしは必ずあなたと共にいる。これが、わたしのあなたをつかわしたしるしである。あなたが民をエジプトから導き出したとき、あなたがたはこの山で神に仕えるであろう」。
3:13モーセは神に言った、「わたしがイスラエルの人々のところへ行って、彼らに『あなたがたの先祖の神が、わたしをあなたがたのところへつかわされました』と言うとき、彼らが『その名はなんというのですか』とわたしに聞くならば、なんと答えましょうか」。3:14神はモーセに言われた、「わたしは、有って有る者」。また言われた、「イスラエルの人々にこう言いなさい、『「わたしは有る」というかたが、わたしをあなたがたのところへつかわされました』と」。3:15神はまたモーセに言われた、「イスラエルの人々にこう言いなさい『あなたがたの先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である主が、わたしをあなたがたのところへつかわされました』と。これは永遠にわたしの名、これは世々のわたしの呼び名である。3:16あなたは行って、イスラエルの長老たちを集めて言いなさい、『あなたがたの先祖の神、アブラハム、イサク、ヤコブの神である主は、わたしに現れて言われました、「わたしはあなたがたを顧み、あなたがたがエジプトでされている事を確かに見た。3:17それでわたしはあなたがたを、エジプトの悩みから導き出して、カナンびと、ヘテびと、アモリびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとの地、乳と蜜の流れる地へ携え上ろうと決心した」と』。3:18彼らはあなたの声に聞き従うであろう。あなたはイスラエルの長老たちと一緒にエジプトの王のところへ行って言いなさい、『ヘブルびとの神、主がわたしたちに現れられました。それで、わたしたちを、三日の道のりほど荒野に行かせて、わたしたちの神、主に犠牲をささげることを許してください』と。3:19しかし、エジプトの王は強い手をもって迫らなければ、あなたがたを行かせないのをわたしは知っている。3:20それで、わたしは手を伸べて、エジプトのうちに行おうとする、さまざまの不思議をもってエジプトを打とう。その後に彼はあなたがたを去らせるであろう。3:21わたしはこの民にエジプトびとの好意を得させる。あなたがたは去るときに、むなし手で去ってはならない。3:22女はみな、その隣の女と、家に宿っている女に、銀の飾り、金の飾り、また衣服を求めなさい。そしてこれらを、あなたがたのむすこ、娘に着けさせなさい。このようにエジプトびとのものを奪い取りなさい」。

第4章

4:1モーセは言った、「しかし、彼らはわたしを信ぜず、またわたしの声に聞き従わないで言うでしょう、『主はあなたに現れなかった』と」。4:2主は彼に言われた、「あなたの手にあるそれは何か」。彼は言った、「つえです」。4:3また言われた、「それを地に投げなさい」。彼がそれを地に投げると、へびになったので、モーセはその前から身を避けた。4:4主はモーセに言われた、「あなたの手を伸ばして、その尾を取りなさい。――そこで手を伸ばしてそれを取ると、手のなかでつえとなった。――4:5これは、彼らの先祖たちの神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である主が、あなたに現れたのを、彼らに信じさせるためである」。4:6主はまた彼に言われた、「あなたの手をふところに入れなさい」。彼が手をふところに入れ、それを出すと、手は、らい病にかかって、雪のように白くなっていた。4:7主は言われた、「手をふところにもどしなさい」。彼は手をふところにもどし、それをふところから出して見ると、回復して、もとの肉のようになっていた。4:8主は言われた、「彼らがもしあなたを信ぜず、また初めのしるしを認めないならば、後のしるしは信じるであろう。4:9彼らがもしこの二つのしるしをも信ぜず、あなたの声に聞き従わないならば、あなたはナイル川の水を取って、かわいた地に注ぎなさい。あなたがナイル川から取った水は、かわいた地で血となるであろう」。
4:10モーセは主に言った、「ああ主よ、わたしは以前にも、またあなたが、しもべに語られてから後も、言葉の人ではありません。わたしは口も重く、舌も重いのです」。4:11主は彼に言われた、「だれが人に口を授けたのか。おし、耳しい、目あき、目しいにだれがするのか。主なるわたしではないか。4:12それゆえ行きなさい。わたしはあなたの口と共にあって、あなたの言うべきことを教えるであろう」。4:13モーセは言った、「ああ、主よ、どうか、ほかの適当な人をおつかわしください」。4:14そこで、主はモーセにむかって怒りを発して言われた、「あなたの兄弟レビびとアロンがいるではないか。わたしは彼が言葉にすぐれているのを知っている。見よ、彼はあなたに会おうとして出てきている。彼はあなたを見て心に喜ぶであろう。4:15あなたは彼に語って言葉をその口に授けなさい。わたしはあなたの口と共にあり、彼の口と共にあって、あなたがたのなすべきことを教え、4:16彼はあなたに代って民に語るであろう。彼はあなたの口となり、あなたは彼のために、神に代るであろう。4:17あなたはそのつえを手に執り、それをもって、しるしを行いなさい」。
4:18モーセは妻の父エテロのところに帰って彼に言った、「どうかわたしを、エジプトにいる身うちの者のところに帰らせ、彼らがまだ生きながらえているか、どうかを見させてください」。エテロはモーセに言った、「安んじて行きなさい」。4:19主はミデヤンでモーセに言われた、「エジプトに帰って行きなさい。あなたの命を求めた人々はみな死んだ」。4:20そこでモーセは妻と子供たちをとり、ろばに乗せて、エジプトの地に帰った。モーセは手に神のつえを執った。
4:21主はモーセに言われた、「あなたがエジプトに帰ったとき、わたしがあなたの手に授けた不思議を、みなパロの前で行いなさい。しかし、わたしが彼の心をかたくなにするので、彼は民を去らせないであろう。4:22あなたはパロに言いなさい、『主はこう仰せられる。イスラエルはわたしの子、わたしの長子である。4:23わたしはあなたに言う。わたしの子を去らせて、わたしに仕えさせなさい。もし彼を去らせるのを拒むならば、わたしはあなたの子、あなたの長子を殺すであろう』と」。
4:24さてモーセが途中で宿っている時、主は彼に会って彼を殺そうとされた。4:25その時チッポラは火打ち石の小刀を取って、その男の子の前の皮を切り、それをモーセの足につけて言った、「あなたはまことに、わたしにとって血の花婿です」。4:26そこで、主はモーセをゆるされた。この時「血の花婿です」とチッポラが言ったのは割礼のゆえである。
4:27主はアロンに言われた、「荒野に行ってモーセに会いなさい」。彼は行って神の山でモーセに会い、これに口づけした。4:28モーセは自分をつかわされた主のすべての言葉と、命じられたすべてのしるしをアロンに告げた。4:29そこでモーセとアロンは行ってイスラエルの人々の長老たちをみな集めた。4:30そしてアロンは主がモーセに語られた言葉を、ことごとく告げた。また彼は民の前でしるしを行ったので、4:31民は信じた。彼らは主がイスラエルの人々を顧み、その苦しみを見られたのを聞き、伏して礼拝した。

第5章

5:1その後、モーセとアロンは行ってパロに言った、「イスラエルの神、主はこう言われる、『わたしの民を去らせ、荒野で、わたしのために祭をさせなさい』と」。5:2パロは言った、「主とはいったい何者か。わたしがその声に聞き従ってイスラエルを去らせなければならないのか。わたしは主を知らない。またイスラエルを去らせはしない」。5:3彼らは言った、「ヘブルびとの神がわたしたちに現れました。どうか、わたしたちを三日の道のりほど荒野に行かせ、わたしたちの神、主に犠牲をささげさせてください。そうしなければ主は疫病か、つるぎをもって、わたしたちを悩まされるからです」。5:4エジプトの王は彼らに言った、「モーセとアロンよ、あなたがたは、なぜ民に働きをやめさせようとするのか。自分の労役につくがよい」。5:5パロはまた言った、「見よ、今や土民の数は多い。しかも、あなたがたは彼らに労役を休ませようとするのか」。5:6その日、パロは民を追い使う者と、民のかしらたちに命じて言った、5:7「あなたがたは、れんがを作るためのわらを、もはや、今までのように、この民に与えてはならない。彼らに自分で行って、わらを集めさせなさい。5:8また前に作っていた、れんがの数どおりに彼らに作らせ、それを減らしてはならない。彼らはなまけ者だ。それだから、彼らは叫んで、『行ってわたしたちの神に犠牲をささげさせよ』と言うのだ。5:9この人々の労役を重くして、働かせ、偽りの言葉に心を寄せさせぬようにしなさい」。
5:10そこで民を追い使う者たちと、民のかしらたちは出て行って、民に言った、「パロはこう仰せられる、『あなたがたに、わらは与えない。5:11自分で行って、見つかる所から、わらを取って来るがよい。しかし働きは少しも減らしてはならない』と」。5:12そこで民はエジプトの全地に散って、わらのかわりに、刈り株を集めた。5:13追い使う者たちは、彼らをせき立てて言った、「わらがあった時と同じように、あなたがたの働きの、日ごとの分を仕上げなければならない」。5:14パロの追い使う者たちがイスラエルの人々の上に立てたかしらたちは、打たれて、「なぜ、あなたがたは、れんが作りの仕事を、きょうも、前のように仕上げないのか」と言われた。
5:15そこで、イスラエルの人々のかしらたちはパロのところに行き、叫んで言った、「あなたはなぜ、しもべどもにこんなことをなさるのですか。5:16しもべどもは、わらを与えられず、しかも彼らはわたしたちに、『れんがは作れ』と言うのです。その上、しもべどもは打たれています。罪はあなたの民にあるのです」。5:17パロは言った、「あなたがたは、なまけ者だ、なまけ者だ。それだから、『行って、主に犠牲をささげさせよ』と言うのだ。5:18さあ、行って働きなさい。わらは与えないが、なおあなたがたは定めた数のれんがを納めなければならない」。5:19イスラエルの人々のかしらたちは、「れんがの日ごとの分を減らしてはならない」と言われたので、悪い事態になったことを知った。5:20彼らがパロを離れて出てきた時、彼らに会おうとして立っていたモーセとアロンに会ったので、5:21彼らに言った、「主があなたがたをごらんになって、さばかれますように。あなたがたは、わたしたちをパロとその家来たちにきらわせ、つるぎを彼らの手に渡して、殺させようとしておられるのです」。
5:22モーセは主のもとに帰って言った、「主よ、あなたは、なぜこの民をひどい目にあわされるのですか。なんのためにわたしをつかわされたのですか。5:23わたしがパロのもとに行って、あなたの名によって語ってからこのかた、彼はこの民をひどい目にあわせるばかりです。また、あなたは、すこしもあなたの民を救おうとなさいません」。

第6章

6:1主はモーセに言われた、「今、あなたは、わたしがパロに何をしようとしているかを見るであろう。すなわちパロは強い手にしいられて、彼らを去らせるであろう。否、彼は強い手にしいられて、彼らを国から追い出すであろう」。
6:2神はモーセに言われた、「わたしは主である。6:3わたしはアブラハム、イサク、ヤコブには全能の神として現れたが、主という名では、自分を彼らに知らせなかった。6:4わたしはまたカナンの地、すなわち彼らが寄留したその寄留の地を、彼らに与えるという契約を彼らと立てた。6:5わたしはまた、エジプトびとが奴隷としているイスラエルの人々のうめきを聞いて、わたしの契約を思い出した。6:6それゆえ、イスラエルの人々に言いなさい、『わたしは主である。わたしはあなたがたをエジプトびとの労役の下から導き出し、奴隷の務から救い、また伸べた腕と大いなるさばきをもって、あなたがたをあがなうであろう。6:7わたしはあなたがたを取ってわたしの民とし、わたしはあなたがたの神となる。わたしがエジプトびとの労役の下からあなたがたを導き出すあなたがたの神、主であることを、あなたがたは知るであろう。6:8わたしはアブラハム、イサク、ヤコブに与えると手を挙げて誓ったその地にあなたがたをはいらせ、それを所有として、与えるであろう。わたしは主である』と」。6:9モーセはこのようにイスラエルの人々に語ったが、彼らは心の痛みと、きびしい奴隷の務のゆえに、モーセに聞き従わなかった。
6:10さて主はモーセに言われた、6:11「エジプトの王パロのところに行って、彼がイスラエルの人々をその国から去らせるように話しなさい」。6:12モーセは主にむかって言った、「イスラエルの人々でさえ、わたしの言うことを聞かなかったのに、どうして、くちびるに割礼のないわたしの言うことを、パロが聞き入れましょうか」。6:13しかし、主はモーセとアロンに語って、イスラエルの人々と、エジプトの王パロのもとに行かせ、イスラエルの人々をエジプトの地から導き出せと命じられた。
6:14彼らの先祖の家の首長たちは次のとおりである。すなわちイスラエルの長子ルベンの子らはハノク、パル、ヘヅロン、カルミで、これらはルベンの一族である。6:15シメオンの子らはエムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ゾハル、およびカナンの女から生れたシャウルで、これらはシメオンの一族である。6:16レビの子らの名は、その世代に従えば、ゲルション、コハテ、メラリで、レビの一生は百三十七年であった。6:17ゲルションの子らの一族はリブニとシメイである。6:18コハテの子らはアムラム、イヅハル、ヘブロン、ウジエルで、コハテの一生は百三十三年であった。6:19メラリの子らはマヘリとムシである。これらはその世代によるレビの一族である。6:20アムラムは父の妹ヨケベデを妻としたが、彼女はアロンとモーセを彼に産んだ。アムラムの一生は百三十七年であった。6:21イヅハルの子らはコラ、ネペグ、ジクリである。6:22ウジエルの子らはミサエル、エルザパン、シテリである。6:23アロンはナションの姉妹、アミナダブの娘エリセバを妻とした。エリセバは彼にナダブ、アビウ、エレアザル、イタマルを産んだ。6:24コラの子らはアッシル、エルカナ、アビアサフで、これらはコラびとの一族である。6:25アロンの子エレアザルはプテエルの娘のひとりを妻とした。彼女はピネハスを彼に産んだ。これらは、その一族によるレビびとの先祖の家の首長たちである。
6:26主が、「イスラエルの人々をその軍団に従って、エジプトの地から導き出しなさい」と言われたのは、このアロンとモーセである。6:27彼らはイスラエルの人々をエジプトから導き出すことについて、エジプトの王パロに語ったもので、すなわちこのモーセとアロンである。
6:28主がエジプトの地でモーセに語られた日に、6:29主はモーセに言われた、「わたしは主である。わたしがあなたに語ることは、みなエジプトの王パロに語りなさい」。6:30しかしモーセは主にむかって言った、「ごらんのとおり、わたしは、くちびるに割礼のない者です。パロがどうしてわたしの言うことを聞きいれましょうか」。

第7章

7:1主はモーセに言われた、「見よ、わたしはあなたをパロに対して神のごときものとする。あなたの兄弟アロンはあなたの預言者となるであろう。7:2あなたはわたしが命じることを、ことごとく彼に告げなければならない。そしてあなたの兄弟アロンはパロに告げて、イスラエルの人々をその国から去らせるようにさせなければならない。7:3しかし、わたしはパロの心をかたくなにするので、わたしのしるしと不思議をエジプトの国に多く行っても、7:4パロはあなたがたの言うことを聞かないであろう。それでわたしは手をエジプトの上に加え、大いなるさばきをくだして、わたしの軍団、わたしの民イスラエルの人々を、エジプトの国から導き出すであろう。7:5わたしが手をエジプトの上にさし伸べて、イスラエルの人々を彼らのうちから導き出す時、エジプトびとはわたしが主であることを知るようになるであろう」。7:6モーセとアロンはそのように行った。すなわち主が彼らに命じられたように行った。7:7彼らがパロと語った時、モーセは八十歳、アロンは八十三歳であった。
7:8主はモーセとアロンに言われた、7:9「パロがあなたがたに、『不思議をおこなって証拠を示せ』と言う時、あなたはアロンに言いなさい、『あなたのつえを取って、パロの前に投げなさい』と。するとそれはへびになるであろう」。7:10それで、モーセとアロンはパロのところに行き、主の命じられたとおりにおこなった。すなわちアロンはそのつえを、パロとその家来たちの前に投げると、それはへびになった。7:11そこでパロもまた知者と魔法使を召し寄せた。これらのエジプトの魔術師らもまた、その秘術をもって同じように行った。7:12すなわち彼らは、おのおのそのつえを投げたが、それらはへびになった。しかし、アロンのつえは彼らのつえを、のみつくした。7:13けれども、パロの心はかたくなになって、主の言われたように、彼らの言うことを聞かなかった。
7:14主はモーセに言われた、「パロの心はかたくなで、彼は民を去らせることを拒んでいる。7:15あなたは、あすの朝、パロのところに行きなさい。見よ、彼は水のところに出ている。あなたは、へびに変ったあのつえを手に執り、ナイル川の岸に立って彼に会い、7:16そして彼に言いなさい、『ヘブルびとの神、主がわたしをあなたにつかわして言われます、「わたしの民を去らせ、荒野で、わたしに仕えるようにさせよ」と。しかし今もなお、あなたが聞きいれようとされないので、7:17主はこう仰せられます、「これによってわたしが主であることを、あなたは知るでしょう。見よ、わたしが手にあるつえでナイル川の水を打つと、それは血に変るであろう。7:18そして川の魚は死に、川は臭くなり、エジプトびとは川の水を飲むことをいとうであろう」』と」。7:19主はまたモーセに言われた、「あなたはアロンに言いなさい、『あなたのつえを執って、手をエジプトの水の上、川の上、流れの上、池の上、またそのすべての水たまりの上にさし伸べて、それを血にならせなさい。エジプト全国にわたって、木の器、石の器にも、血があるようになるでしょう』と」。
7:20モーセとアロンは主の命じられたようにおこなった。すなわち、彼はパロとその家来たちの目の前で、つえをあげてナイル川の水を打つと、川の水は、ことごとく血に変った。7:21それで川の魚は死に、川は臭くなり、エジプトびとは川の水を飲むことができなくなった。そしてエジプト全国にわたって血があった。7:22エジプトの魔術師らも秘術をもって同じようにおこなった。しかし、主の言われたように、パロの心はかたくなになり、彼らの言うことを聞かなかった。7:23パロは身をめぐらして家に入り、またこのことをも心に留めなかった。7:24すべてのエジプトびとはナイル川の水が飲めなかったので、飲む水を得ようと、川のまわりを掘った。7:25主がナイル川を打たれてのち七日を経た。

第8章

8:1主はモーセに言われた、「あなたはパロのところに行って言いなさい、『主はこう仰せられます、「わたしの民を去らせて、わたしに仕えさせなさい。8:2しかし、去らせることを拒むならば、見よ、わたしは、かえるをもって、あなたの領土を、ことごとく撃つであろう。8:3ナイル川にかえるが群がり、のぼって、あなたの家、あなたの寝室にはいり、寝台にのぼり、あなたの家来と民の家にはいり、またあなたのかまどや、こね鉢にはいり、8:4あなたと、あなたの民と、すべての家来のからだに、はい上がるであろう」と』」。8:5主はモーセに言われた、「あなたはアロンに言いなさい、『つえを持って、手を川の上、流れの上、、池の上にさし伸べ、かえるをエジプトの地にのぼらせなさい』と」。8:6アロンが手をエジプトの水の上にさし伸べたので、かえるはのぼってエジプトの地をおおった。8:7魔術師らも秘術をもって同じように行い、かえるをエジプトの地にのぼらせた。
8:8パロはモーセとアロンを召して言った、「かえるをわたしと、わたしの民から取り去るように主に願ってください。そのときわたしはこの民を去らせて、主に犠牲をささげさせるでしょう」。8:9モーセはパロに言った、「あなたと、あなたの家来と、あなたの民のために、わたしがいつ願って、このかえるを、あなたとあなたの家から断って、ナイル川だけにとどまらせるべきか、きめてください」。8:10パロは言った、「明日」。モーセは言った、「仰せのとおりになって、わたしたちの神、主に並ぶもののないことを、あなたが知られますように。8:11そして、かえるはあなたと、あなたの家と、あなたの家来と、あなたの民を離れてナイル川にだけとどまるでしょう」。8:12こうしてモーセとアロンはパロを離れて出た。モーセは主がパロにつかわされたかえるの事について、主に呼び求めたので、8:13主はモーセのことばのようにされ、かえるは家から、庭から、また畑から死に絶えた。8:14これをひと山ひと山に積んだので、地は臭くなった。8:15ところがパロは息つくひまのできたのを見て、主が言われたように、その心をかたくなにして彼らの言うことを聞かなかった。
8:16主はモーセに言われた、「あなたはアロンに言いなさい、『あなたのつえをさし伸べて地のちりを打ち、それをエジプトの全国にわたって、ぶよとならせなさい』と」。8:17彼らはそのように行った。すなわちアロンはそのつえをとって手をさし伸べ、地のちりを打ったので、ぶよは人と家畜についた。すなわち、地のちりはみなエジプトの全国にわたって、ぶよとなった。8:18魔術師らも秘術をもって同じように行い、ぶよを出そうとしたが、彼らにはできなかった。ぶよが人と家畜についたので、8:19魔術師らはパロに言った、「これは神の指です」。しかし主の言われたように、パロの心はかたくなになって、彼らのいうことを聞かなかった。
8:20主はモーセに言われた、「あなたは朝早く起きてパロの前に立ちなさい。ちょうど彼は水のところに出ているから彼に言いなさい、『主はこう仰せられる、「わたしの民を去らせて、わたしに仕えさせなさい。8:21あなたがわたしの民を去らせないならば、わたしは、あなたとあなたの家来と、あなたの民とあなたの家とに、あぶの群れをつかわすであろう。エジプトびとの家々は、あぶの群れで満ち、彼らの踏む地もまた、そうなるであろう。8:22その日わたしは、わたしの民の住むゴセンの地を区別して、そこにあぶの群れを入れないであろう。国の中でわたしが主であることをあなたが知るためである。8:23わたしはわたしの民とあなたの民の間に区別をおく。このしるしは、あす起るであろう」と』」。8:24主はそのようにされたので、おびただしいあぶが、パロの家と、その家来の家と、エジプトの全国にはいってきて、地はあぶの群れのために害をうけた。
8:25そこで、パロはモーセとアロンを召して言った、「あなたがたは行ってこの国の内で、あなたがたの神に犠牲をささげなさい」。8:26モーセは言った、「そうすることはできません。わたしたちはエジプトびとの忌むものを犠牲として、わたしたちの神、主にささげるからです。もし、エジプトびとの目の前で、彼らの忌むものを犠牲にささげるならば、彼らはわたしたちを石で打たないでしょうか。8:27わたしたちは三日の道のりほど、荒野にはいって、わたしたちの神、主に犠牲をささげ、主がわたしたちに命じられるようにしなければなりません」。8:28パロは言った、「わたしはあなたがたを去らせ、荒野で、あなたがたの神、主に犠牲をささげさせよう。ただあまり遠くへ行ってはならない。わたしのために祈願しなさい」。8:29モーセは言った、「わたしはあなたのもとから出て行って主に祈願しましょう。あすあぶの群れがパロと、その家来と、その民から離れるでしょう。ただパロはまた欺いて、民が主に犠牲をささげに行くのをとめないようにしてください」。8:30こうしてモーセはパロのもとを出て、主に祈願したので、8:31主はモーセの言葉のようにされた。すなわち、あぶの群れをパロと、その家来と、その民から取り去られたので、一つも残らなかった。8:32しかしパロはこんどもまた、その心をかたくなにして民を去らせなかった。

第9章

9:1主はモーセに言われた、「パロのもとに行って、彼に言いなさい、『ヘブルびとの神、主はこう仰せられる、「わたしの民を去らせて、わたしに仕えさせなさい。9:2あなたがもし彼らを去らせることを拒んで、なお彼らを留めおくならば、9:3主の手は最も激しい疫病をもって、野にいるあなたの家畜、すなわち馬、ろば、らくだ、牛、羊の上に臨むであろう。9:4しかし、主はイスラエルの家畜と、エジプトの家畜を区別され、すべてイスラエルの人々に属するものには一頭も死ぬものがないであろう」と』」。9:5主は、また、時を定めて仰せられた、「あす、主はこのことを国に行うであろう」。9:6あくる日、主はこのことを行われたので、エジプトびとの家畜はみな死んだ。しかし、イスラエルの人々の家畜は一頭も死ななかった。9:7パロは人をつかわして見させたが、イスラエルの家畜は一頭も死んでいなかった。それでもパロの心はかたくなで、民を去らせなかった。
9:8主はモーセとアロンに言われた、「あなたがたは、かまどのすすを両手いっぱい取り、それをモーセはパロの目の前で天にむかって、まき散らしなさい。9:9それはエジプトの全国にわたって、細かいちりとなり、エジプト全国で人と獣に付いて、うみの出るはれものとなるであろう」。9:10そこで彼らは、かまどのすすを取ってパロの前に立ち、モーセは天にむかってこれをまき散らしたので、人と獣に付いて、うみの出るはれものとなった。9:11魔術師らは、はれもののためにモーセの前に立つことができなかった。はれものが魔術師らと、すべてのエジプトびとに生じたからである。9:12しかし、主はパロの心をかたくなにされたので、彼は主がモーセに語られたように、彼らの言うことを聞かなかった。
9:13主はまたモーセに言われた、「朝早く起き、パロの前に立って、彼に言いなさい、『ヘブルびとの神、主はこう仰せられる、「わたしの民を去らせて、わたしに仕えさせなさい。9:14わたしは、こんどは、もろもろの災を、あなたと、あなたの家来と、あなたの民にくだし、わたしに並ぶものが全地にないことを知らせるであろう。9:15わたしがもし、手をさし伸べ、疫病をもって、あなたと、あなたの民を打っていたならば、あなたは地から断ち滅ぼされていたであろう。9:16しかし、わたしがあなたをながらえさせたのは、あなたにわたしの力を見させるため、そして、わたしの名が全地に宣べ伝えられるためにほかならない。9:17それに、あなたはなお、わたしの民にむかって、おのれを高くし、彼らを去らせようとしない。9:18ゆえに、あすの今ごろ、わたしは恐ろしく大きな雹を降らせるであろう。それはエジプトの国が始まった日から今まで、かつてなかったほどのものである。9:19それゆえ、いま、人をやって、あなたの家畜と、あなたが野にもっているすべてのものを、のがれさせなさい。人も獣も、すべて野にあって家に帰らないものは降る雹に打たれて死ぬであろう」と』」。9:20パロの家来のうち、主の言葉をおそれる者は、そのしもべと家畜を家にのがれさせたが、9:21主の言葉を意にとめないものは、そのしもべと家畜を野に残しておいた。
9:22主はモーセに言われた、「あなたの手を天にむかってさし伸べ、エジプトの全国にわたって、エジプトの地にいる人と獣と畑のすべての青物の上に雹を降らせなさい」。9:23モーセが天にむかってつえをさし伸べると、主は雷と雹をおくられ、火は地にむかって、はせ下った。こうして主は、雹をエジプトの地に降らされた。9:24そして雹が降り、雹の間に火がひらめき渡った。雹は恐ろしく大きく、エジプト全国には、国をなしてこのかた、かつてないものであった。9:25雹はエジプト全国にわたって、すべて畑にいる人と獣を打った。雹はまた畑のすべての青物を打ち、野のもろもろの木を折り砕いた。9:26ただイスラエルの人々のいたゴセンの地には、雹が降らなかった。
9:27そこで、パロは人をつかわし、モーセとアロンを召して言った、「わたしはこんどは罪を犯した。主は正しく、わたしと、わたしの民は悪い。9:28主に祈願してください。この雷と雹はもうじゅうぶんです。わたしはあなたがたを去らせます。もはやとどまらなくてもよろしい」。9:29モーセは彼に言った、「わたしは町を出ると、すぐ、主にむかってわたしの手を伸べひろげます。すると雷はやみ、雹はもはや降らなくなり、あなたは、地が主のものであることを知られましょう。9:30しかし、あなたとあなたの家来たちは、なお、神なる主を恐れないことを、わたしは知っています」。9:31――亜麻と大麦は打ち倒された。大麦は穂を出し、亜麻は花が咲いていたからである。9:32小麦とスペルタ麦はおくてであるため打ち倒されなかった。――9:33モーセはパロのもとを去り、町を出て、主にむかって手を伸べひろげたので、雷と雹はやみ、雨は地に降らなくなった。9:34ところがパロは雨と雹と雷がやんだのを見て、またも罪を犯し、心をかたくなにした。彼も家来も、そうであった。9:35すなわちパロは心をかたくなにし、主がモーセによって語られたように、イスラエルの人々を去らせなかった。

第10章

10:1そこで、主はモーセに言われた、「パロのもとに行きなさい。わたしは彼の心とその家来たちの心をかたくなにした。これは、わたしがこれらのしるしを、彼らの中に行うためである。10:2また、わたしがエジプトびとをあしらったこと、また彼らの中にわたしが行ったしるしを、あなたがたが、子や孫の耳に語り伝えるためである。そしてあなたがたは、わたしが主であることを知るであろう」。
10:3モーセとアロンはパロのもとに行って彼に言った、「ヘブルびとの神、主はこう仰せられる、『いつまで、あなたは、わたしに屈伏することを拒むのですか。民を去らせて、わたしに仕えさせなさい。10:4もし、わたしの民を去らせることを拒むならば、見よ、あす、わたしはいなごを、あなたの領土にはいらせるであろう。10:5それは地のおもてをおおい、人が地を見ることもできないほどになるであろう。そして雹を免れて、残されているものを食い尽し、野にはえているあなたがたの木をみな食い尽すであろう。10:6またそれはあなたの家とあなたのすべての家来の家、および、すべてのエジプトびとの家に満ちるであろう。このようなことは、あなたの父たちも、また、祖父たちも、彼らが地上にあった日から今日に至るまで、かつて見たことのないものである』と」。そして彼は身をめぐらして、パロのもとを出て行った。
10:7パロの家来たちは王に言った、「いつまで、この人はわれわれのわなとなるのでしょう。この人々を去らせ、彼らの神なる主に仕えさせては、どうでしょう。エジプトが滅びてしまうことに、まだ気づかれないのですか」。10:8そこで、モーセとアロンは、また、パロのもとに召し出された。パロは彼らに言った、「行って、あなたがたの神、主に仕えなさい。しかし、行くものはだれだれか」。10:9モーセは言った、「わたしたちは幼い者も、老いた者も行きます。むすこも娘も携え、羊も牛も連れて行きます。わたしたちは主の祭を執り行わなければならないのですから」。10:10パロは彼らに言った、「万一、わたしが、あなたがたに子供を連れてまで去らせるようなことがあれば、主があなたがたと共にいますがよい。あなたがたは悪いたくらみをしている。10:11それはいけない。あなたがたは男だけ行って主に仕えるがよい。それが、あなたがたの要求であった」。彼らは、ついにパロの前から追い出された。
10:12主はモーセに言われた、「あなたの手をエジプトの地の上にさし伸べて、エジプトの地にいなごをのぼらせ、地のすべての青物、すなわち、雹が打ち残したものを、ことごとく食べさせなさい」。10:13そこでモーセはエジプトの地の上に、つえをさし伸べたので、主は終日、終夜、東風を地に吹かせられた。朝となって、東風は、いなごを運んできた。10:14いなごはエジプト全国にのぞみ、エジプトの全領土にとどまり、その数がはなはだ多く、このようないなごは前にもなく、また後にもないであろう。10:15いなごは地の全面をおおったので、地は暗くなった。そして地のすべての青物と、雹の打ち残した木の実を、ことごとく食べたので、エジプト全国にわたって、木にも畑の青物にも、緑の物とては何も残らなかった。10:16そこで、パロは、急いでモーセとアロンを召して言った、「わたしは、あなたがたの神、主に対し、また、あなたがたに対して罪を犯しました。10:17それで、どうか、もう一度だけ、わたしの罪をゆるしてください。そしてあなたがたの神、主に祈願して、ただ、この死をわたしから離れさせてください」。10:18そこで彼はパロのところから出て、主に祈願したので、10:19主は、はなはだ強い西風に変らせ、いなごを吹き上げて、これを紅海に追いやられたので、エジプト全土には一つのいなごも残らなかった。10:20しかし、主がパロの心をかたくなにされたので、彼はイスラエルの人々を去らせなかった。
10:21主はまたモーセに言われた、「天にむかってあなたの手をさし伸べ、エジプトの国に、くらやみをこさせなさい。そのくらやみは、さわれるほどである」。10:22モーセが天にむかって手をさし伸べたので、濃いくらやみは、エジプト全国に臨み三日に及んだ。10:23三日の間、人々は互に見ることもできず、まただれもその所から立つ者もなかった。しかし、イスラエルの人々には、みな、その住む所に光があった。10:24そこでパロはモーセを召して言った、「あなたがたは行って主に仕えなさい。あなたがたの子供も連れて行ってもよろしい。ただ、あなたがたの羊と牛は残して置きなさい」。10:25しかし、モーセは言った、「あなたは、また、わたしたちの神、主にささげる犠牲と燔祭の物をも、わたしたちにくださらなければなりません。10:26わたしたちは家畜も連れて行きます。ひずめ一つも残しません。わたしたちは、そのうちから取って、わたしたちの神、主に仕えねばなりません。またわたしたちは、その場所に行くまでは、何をもって、主に仕えるべきかを知らないからです」。10:27けれども、主がパロの心をかたくなにされたので、パロは彼らを去らせようとしなかった。10:28それでパロはモーセに言った、「わたしの所から去りなさい。心して、わたしの顔は二度と見てはならない。わたしの顔を見る日には、あなたの命はないであろう」。10:29モーセは言った、「よくぞ仰せられました。わたしは、二度と、あなたの顔を見ないでしょう」。

第11章

11:1主はモーセに言われた、「わたしは、なお一つの災を、パロとエジプトの上にくだし、その後、彼はあなたがたをここから去らせるであろう。彼が去らせるとき、彼はあなたがたを、ことごとくここから追い出すであろう。11:2あなたは民の耳に語って、男は隣の男から、女は隣の女から、それぞれ銀の飾り、金の飾りを請い求めさせなさい」。11:3主は民にエジプトびとの好意を得させられた。またモーセその人は、エジプトの国で、パロの家来たちの目と民の目とに、はなはだ大いなるものと見えた。
11:4モーセは言った、「主はこう仰せられる、『真夜中ごろ、わたしはエジプトの中へ出て行くであろう。11:5エジプトの国のうちのういごは、位に座するパロのういごをはじめ、ひきうすの後にいる、はしためのういごに至るまで、みな死に、また家畜のういごもみな死ぬであろう。11:6そしてエジプト全国に大いなる叫びが起るであろう。このようなことはかつてなく、また、ふたたびないであろう』と。11:7しかし、すべて、イスラエルの人々にむかっては、人にむかっても、獣にむかっても、犬さえその舌を鳴らさないであろう。これによって主がエジプトびととイスラエルびととの間の区別をされるのを、あなたがたは知るであろう。11:8これらのあなたの家来たちは、みな、わたしのもとに下ってきて、ひれ伏して言うであろう、『あなたもあなたに従う民もみな出て行ってください』と。その後、わたしは出て行きます」。彼は激しく怒ってパロのもとから出て行った。11:9主はモーセに言われた、「パロはあなたがたの言うことを聞かないであろう。それゆえ、わたしはエジプトの国に不思議を増し加えるであろう」。
11:10モーセとアロンは、すべてこれらの不思議をパロの前に行ったが、主がパロの心をかたくなにされたので、彼はイスラエルの人々をその国から去らせなかった。

第12章

12:1主はエジプトの国で、モーセとアロンに告げて言われた、12:2「この月をあなたがたの初めの月とし、これを年の正月としなさい。12:3あなたがたはイスラエルの全会衆に言いなさい、『この月の十日におのおの、その父の家ごとに小羊を取らなければならない。すなわち、一家族に小羊一頭を取らなければならない。12:4もし家族が少なくて一頭の小羊を食べきれないときは、家のすぐ隣の人と共に、人数に従って一頭を取り、おのおの食べるところに応じて、小羊を見計らわなければならない。12:5小羊は傷のないもので、一歳の雄でなければならない。羊またはやぎのうちから、これを取らなければならない。12:6そしてこの月の十四日まで、これを守って置き、イスラエルの会衆はみな、夕暮にこれをほふり、12:7その血を取り、小羊を食する家の入口の二つの柱と、かもいにそれを塗らなければならない。12:8そしてその夜、その肉を火に焼いて食べ、種入れぬパンと苦菜を添えて食べなければならない。12:9生でも、水で煮ても、食べてはならない。火に焼いて、その頭を足と内臓と共に食べなければならない。12:10朝までそれを残しておいてはならない。朝まで残るものは火で焼きつくさなければならない。12:11あなたがたは、こうして、それを食べなければならない。すなわち腰を引きからげ、足にくつをはき、手につえを取って、急いでそれを食べなければならない。これは主の過越である。12:12その夜わたしはエジプトの国を巡って、エジプトの国におる人と獣との、すべてのういごを打ち、またエジプトのすべての神々に審判を行うであろう。わたしは主である。12:13その血はあなたがたのおる家々で、あなたがたのために、しるしとなり、わたしはその血を見て、あなたがたの所を過ぎ越すであろう。わたしがエジプトの国を撃つ時、災が臨んで、あなたがたを滅ぼすことはないであろう。
12:14この日はあなたがたに記念となり、あなたがたは主の祭としてこれを守り、代々、永久の定めとしてこれを守らなければならない。12:15七日の間あなたがたは種入れぬパンを食べなければならない。その初めの日に家からパン種を取り除かなければならない。第一日から第七日までに、種を入れたパンを食べる人はみなイスラエルから断たれるであろう。12:16かつ、あなたがたは第一日に聖会を、また第七日に聖会を開かなければならない。これらの日には、なんの仕事もしてはならない。ただ、おのおのの食べものだけは作ることができる。12:17あなたがたは、種入れぬパンの祭を守らなければならない。ちょうど、この日、わたしがあなたがたの軍勢をエジプトの国から導き出したからである。それゆえ、あなたがたは代々、永久の定めとして、その日を守らなければならない。12:18正月に、その月の十四日の夕方に、あなたがたは種入れぬパンを食べ、その月の二十一日の夕方まで続けなければならない。12:19七日の間、家にパン種を置いてはならない。種を入れたものを食べる者は、寄留の他国人であれ、国に生れた者であれ、すべて、イスラエルの会衆から断たれるであろう。12:20あなたがたは種を入れたものは何も食べてはならない。すべてあなたがたのすまいにおいて種入れぬパンを食べなければならない』」。
12:21そこでモーセはイスラエルの長老をみな呼び寄せて言った、「あなたがたは急いで家族ごとに一つの小羊を取り、その過越の獣をほふらなければならない。12:22また一束のヒソプを取って鉢の血に浸し、鉢の血を、かもいと入口の二つの柱につけなければならない。朝まであなたがたは、ひとりも家の戸の外に出てはならない。12:23主が行き巡ってエジプトびとを撃たれるとき、かもいと入口の二つの柱にある血を見て、主はその入口を過ぎ越し、滅ぼす者が、あなたがたの家にはいって、撃つのを許されないであろう。12:24あなたがたはこの事を、あなたと子孫のための定めとして、永久に守らなければならない。12:25あなたがたは、主が約束されたように、あなたがたに賜る地に至るとき、この儀式を守らなければならない。12:26もし、あなたがたの子供たちが『この儀式はどんな意味ですか』と問うならば、12:27あなたがたは言いなさい、『これは主の過越の犠牲である。エジプトびとを撃たれたとき、エジプトにいたイスラエルの人々の家を過ぎ越して、われわれの家を救われたのである』」。民はこのとき、伏して礼拝した。
12:28イスラエルの人々は行ってそのようにした。すなわち主がモーセとアロンに命じられたようにした。
12:29夜中になって主はエジプトの国の、すべてのういご、すなわち位に座するパロのういごから、地下のひとやにおる捕虜のういごにいたるまで、また、すべての家畜のういごを撃たれた。12:30それでパロとその家来およびエジプトびとはみな夜のうちに起きあがり、エジプトに大いなる叫びがあった。死人のない家がなかったからである。12:31そこでパロは夜のうちにモーセとアロンを呼び寄せて言った、「あなたがたとイスラエルの人々は立って、わたしの民の中から出て行くがよい。そしてあなたがたの言うように、行って主に仕えなさい。12:32あなたがたの言うように羊と牛とを取って行きなさい。また、わたしを祝福しなさい」。
12:33こうしてエジプトびとは民をせき立てて、すみやかに国を去らせようとした。彼らは「われわれはみな死ぬ」と思ったからである。12:34民はまだパン種を入れない練り粉を、こばちのまま着物に包んで肩に負った。12:35そしてイスラエルの人々はモーセの言葉のようにして、エジプトびとから銀の飾り、金の飾り、また衣服を請い求めた。12:36主は民にエジプトびとの情を得させ、彼らの請い求めたものを与えさせられた。こうして彼らはエジプトびとのものを奪い取った。
12:37さて、イスラエルの人々はラメセスを出立してスコテに向かった。女と子供を除いて徒歩の男子は約六十万人であった。12:38また多くの入り混じった群衆および羊、牛など非常に多くの家畜も彼らと共に上った。12:39そして彼らはエジプトから携えて出た練り粉をもって、種入れぬパンの菓子を焼いた。まだパン種を入れていなかったからである。それは彼らがエジプトから追い出されて滞ることができず、また、何の食料をも整えていなかったからである。
12:40イスラエルの人々がエジプトに住んでいた間は、四百三十年であった。12:41四百三十年の終りとなって、ちょうどその日に、主の全軍はエジプトの国を出た。12:42これは彼らをエジプトの国から導き出すために主が寝ずの番をされた夜であった。ゆえにこの夜、すべてのイスラエルの人々は代々、主のために寝ずの番をしなければならない。
12:43主はモーセとアロンとに言われた、「過越の祭の定めは次のとおりである。すなわち、異邦人はだれもこれを食べてはならない。12:44しかし、おのおのが金で買ったしもべは、これに割礼を行ってのち、これを食べさせることができる。12:45仮ずまいの者と、雇人とは、これを食べてはならない。12:46ひとつの家でこれを食べなければならない。その肉を少しも家の外に持ち出してはならない。また、その骨を折ってはならない。12:47イスラエルの全会衆はこれを守らなければならない。12:48寄留の外国人があなたのもとにとどまっていて、主に過越の祭を守ろうとするときは、その男子はみな割礼を受けてのち、近づいてこれを守ることができる。そうすれば彼は国に生れた者のようになるであろう。しかし、無割礼の者はだれもこれを食べてはならない。12:49この律法は国に生れたものにも、あなたがたのうちに寄留している外国人にも同一である」。
12:50イスラエルの人々は、みなこのようにし、主がモーセとアロンに命じられたようにした。12:51ちょうどその日に、主はイスラエルの人々を、その軍団に従ってエジプトの国から導き出された。

第13章

13:1主はモーセに言われた、13:2「イスラエルの人々のうちで、すべてのういご、すなわちすべて初めに胎を開いたものを、人であれ、獣であれ、みな、わたしのために聖別しなければならない。それはわたしのものである」。
13:3モーセは民に言った、「あなたがたは、エジプトから、奴隷の家から出るこの日を覚えなさい。主が強い手をもって、あなたがたをここから導き出されるからである。種を入れたパンを食べてはならない。13:4あなたがたはアビブの月のこの日に出るのである。13:5主があなたに与えると、あなたの先祖たちに誓われたカナンびと、ヘテびと、アモリびと、ヒビびと、エブスびとの地、乳と蜜との流れる地に、導き入れられる時、あなたはこの月にこの儀式を守らなければならない。13:6七日のあいだ種入れぬパンを食べ、七日目には主に祭をしなければならない。13:7種入れぬパンを七日のあいだ食べなければならない。種を入れたパンをあなたの所に置いてはならない。また、あなたの地区のどこでも、あなたの所にパン種を置いてはならない。13:8その日、あなたの子に告げて言いなさい、『これはわたしがエジプトから出るときに、主がわたしになされたことのためである』。13:9そして、これを、手につけて、しるしとし、目の間に置いて記念とし、主の律法をあなたの口に置かなければならない。主が強い手をもって、あなたをエジプトから導き出されるからである。13:10それゆえ、あなたはこの定めを年々その期節に守らなければならない。
13:11主があなたとあなたの先祖たちに誓われたように、あなたをカナンびとの地に導いて、それをあなたに賜わる時、13:12あなたは、すべて初めに胎を開いた者、およびあなたの家畜の産むういごは、ことごとく主にささげなければならない。すなわち、それらの男性のものは主に帰せしめなければならない。13:13また、すべて、ろばの、初めて胎を開いたものは、小羊をもって、あがなわなければならない。もし、あがなわないならば、その首を折らなければならない。あなたの子らのうち、すべて、男のういごは、あがなわなければならない。13:14後になって、あなたの子が『これはどんな意味ですか』と問うならば、これに言わなければならない、『主が強い手をもって、われわれをエジプトから、奴隷の家から導き出された。13:15そのときパロが、かたくなで、われわれを去らせなかったため、主はエジプトの国のういごを、人のういごも家畜のういごも、ことごとく殺された。それゆえ、初めて胎を開く男性のものはみな、主に犠牲としてささげるが、わたしの子供のうちのういごは、すべてあがなうのである』。13:16そして、これを手につけて、しるしとし、目の間に置いて覚えとしなければならない。主が強い手をもって、われわれをエジプトから導き出されたからである」。
13:17さて、パロが民を去らせた時、ペリシテびとの国の道は近かったが、神は彼らをそれに導かれなかった。民が戦いを見れば悔いてエジプトに帰るであろうと、神は思われたからである。13:18神は紅海に沿う荒野の道に、民を回らされた。イスラエルの人々は武装してエジプトの国を出て、上った。13:19そのときモーセはヨセフの遺骸を携えていた。ヨセフが、「神は必ずあなたがたを顧みられるであろう。そのとき、あなたがたは、わたしの遺骸を携えて、ここから上って行かなければならない」と言って、イスラエルの人々に固く誓わせたからである。13:20こうして彼らは更にスコテから進んで、荒野の端にあるエタムに宿営した。13:21主は彼らの前に行かれ、昼は雲の柱をもって彼らを導き、夜は火の柱をもって彼らを照し、昼も夜も彼らを進み行かせられた。13:22昼は雲の柱、夜は火の柱が、民の前から離れなかった。


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